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オプション戦略責任者
サマリー: この記事では、2024年の米国選挙期間中の市場の変動に対してヘッジを行ったり利益を得たりするために、SPXやNDXなどの米国指数オプションをどのように使用するかについて説明しています。プロテクティブ・プット、プット・デビット・スプレッド、コール買い、プット・クレジット・スプレッドなどの戦略を取り上げ、選挙関連の市場変動に対応するための方法を紹介しています。
オプションは複雑で高リスクな商品であり、知識、投資経験、そして多くの場合、高いリスク許容度が必要です。オプションに投資する前に、その仕組みやリスクについて十分に理解することをお勧めします。
※本レポートは、サクソグループのアナリストによるレポート原文(英語)を、オプショントレード普及協会(株式会社M&F Asset Architect)代表 守屋史章氏が翻訳されたものです。
2024年の米国議会・大統領選挙が近づいておりますが、市場は、選挙結果の不確実性が生み出す大きな株価変動の可能性に身構えつつあります。この記事では、次のように市場に対して最もネガティブな影響を与える可能性のあるものと、最もポジティブな影響を与える可能性のあるもの2つの主要な選挙シナリオを想定して話を進めていきます。
民主党の圧勝(ハリス氏勝利、議会も民主党)予想される法人税の引き上げと規制の強化により、市場に悪影響を与える可能性があります。
ハリスの行き詰まり(ハリス氏勝利も、議会はねじれ)大幅な政策変更が議会を通過しにくくなるため、市場にとっては良い結果をもたらす可能性がありますが、動きは強いものではないかもしれません。
これらのシナリオは、投資家にとってはリスクでもあり、チャンスでもあります。市場の大暴落から自身のポートフォリオを守るにせよ、株価の変動が大きくなることを活かす戦い方をするにせよ、米国インデックスオプション(SPX、NDX、RUT)が、選挙という不確実性に支配される現在の市場で戦うための戦略的なツールとなり得ます。
この記事では、インデックスオプションをどのように使えばよいのか、以下の2点について説明します。
インデックス・オプションは、S&P 500(SPX)、NASDAQ-100(NDX)、ラッセル2000(RUT)など、様々な株式市場の指数を原資産とし、これを直接取引したり、あるいはポートフォリオのヘッジに利用したりすることができます。これらのオプションは、満期時のインデックスの値(清算指数)に基づいて現金決済されるため、原資産の現物株式を保有しておく必要もなく、また満期に現受け(株式を売買)する必要もありません。
一般に、SPYやQQQといったETFオプションも、インデックスの取引に広く利用されますが、インデックスオプションには次のような利点があるためこちらもまた使いやすいものであると言えるでしょう。
これらの理由から、インデックスオプションは、米国選挙のような市場への影響の大きいイベントにおいて、市場の大きな動きから自身のポートフォリオを守るため、また、利益を得るための、トレーダーにとって好ましいツールだといえるのです。.
米国の選挙は、その結果いかんによって、将来の政策が変わってくることになりますが、選挙結果は誰にも予想できない不確実なものであるがゆえに、この不確実性により市場において大きな価格変動が起こる可能性があるのです。
例えば、民主党が優勢になれば、法人税増税への懸念から市場が否定的な反応を示す可能性がありますが、ハリス氏が自由に政策を実行できない状況(ハリス氏の行き詰まり=議会のねじれ:ハリス氏勝利も議会が上下両院を民主党が取れない状況)となれば、市場は肯定的な反応を示す可能性がある、といったように、結果がわからない以上、株価がどうなるかもわかりませんし、選挙前に大勢がどちらかに偏ってしまえば、もし異なる結果になった場合に、そのポジションの逆回転により大きな株価変動が生じる可能性もあるのです。
選挙後の市場の下落からポートフォリオを保護する効果的な方法の1つは、プロテクティブプット(=保険のプット買い)です。SPX、NDX、RUTなどのインデックスのプットオプションを買っていれば、市場が大きく下落した場合には、このプットが大きな利益を上げる可能性があるため、ポートフォリオの損失を相殺できうるわけです。
一方、市場がポジティブに反応すると予想される場合は、ロングコールやプットクレジットスプレッドなどの戦略により、リスクとコストを抑えながら株価が上昇するシナリオ下において利益を得ることができます。
重要な注意事項:
この記事で取り上げられている戦略例は、純粋に教育目的で提供されるものです。これらは、皆さんが、オプション的思考プロセスを身につける助けになることを目的として提供されているにすぎず、安易に取り組むべきものではありません。すべての投資家及びトレーダーは、投資判断を行う前に、自身の選択する戦略のリスク評価を実施しなければなりません。すなわち、自身の資産状況、リスク許容度、投資目標を考慮に入れて当該戦略をとることに対する投資判断を行う必要があるということです。株式市場への投資にはリスクが伴い、十分な情報に基づいた意思決定を行うことが重要であるということを肝に銘じておかなければなりません。
選挙結果は、しばしば大きな市場の変動(ボラティリティ)をもたらします。米国の選挙後に株価の下落が懸念される場合、ポートフォリオを保護する効果的な方法の1つは、特にプットオプションを利用することです。
プロテクティブプットは、ポートフォリオをヘッジする最も簡単な方法の1つです。インデックス(SPX、NDX、RUT)のプットオプションを買うのです。選挙後に市場が下落した場合、プットオプションの価値は上昇するので、あなたの広く分散されたポートフォリオの損失の一部または全部を相殺してくれるでしょう。
例えば、あなたのポートフォリオが現在約100,000ドルの資産価値があるとしましょう。S&P 500が5%下落する可能性があると予想している場合(現在の5,800ポイントから約290ポイント)、権利行使価格5,510のアウトオブザマネーのプットオプション(P5510)を買えば、いくら下落しても5510ポイント以下の部分の損失はカバーされます。ただし、この戦略にはコストがかかります。下掲のオプションチェーン(価格表)を御覧ください。11月15日に満期を迎えるSPX-P5510の購入には約3,230ドル(1枚32.30ドル×100株相当)のコストがかかるため、損益分岐点は5,477.70ポイントということになります(権利行使価格からオプションプレミアム引いて算出:5510-32.30=5477.70)。このプロテクティブプットが意味を持ってくるのは、S&P 500が5%以上下落した場合ということになります。
すなわち、支払コストを考えると、インデックスが大きく下落しない場合、つまり緩やかに下落する場合、この戦略はあまり効果がないことになります。
ポートフォリオの下落ヘッジをより効果的に行うために、プットデビットスプレッド戦略を利用することもできます。これにより低コストで株価の下落ヘッジが可能になります。この戦略では、現在の指数の値に近い権利行使価格のプットオプションを買い、買い支払いコストを下げるために、権利行使価格の低いプットオプションを売ります(売ることによりプレミアムを受け取れます)。
例えば、権利行使価格5,510のプットオプションを単騎買いする代わりに、より高い権利行使価格のプットオプション(P5600など)を買い、P5500を売るというスプレッド(=買いと売りを両方持つポジション)を組むのです。このスプレッドの純コストは、P5510を単騎買いした場合の3,230ドルのコストに比べて、1,220ドル(12.20ドル* 100)と大幅に低くなっています(P5600買いで44.5~44.8ドル支払い、P5500売りにより32.2~32.7ドル受け取るため、差し引き約12.2ドルの支払いとなる)。
この戦略では、最大利益が2つの行使価格の差額(5600-5500=100ドル ×100)から支払コストを引いた額(つまり、10,000–1,220= 8,780ドル)に制限されますが、それでも5%程度の市場の下落に対して十分なヘッジとなることがわかると思います。すなわちS&P 500が満期までに5,500程度まで下落した場合に十分なヘッジ効果があるということです。5%を超えるような下落はないと予想するならば、このポジションは費用対効果の高い下落ヘッジ戦略だといえるでしょう。
選挙結果は、株式市場の下落を引き起こすだけではありません。市場が好意的に反応した場合、急激な上昇をもたらすこともあります。このような上昇シナリオから利益を得る単純な方法の1つは、コールオプションを買うことです。株価が上昇すれば利益を得られる可能性があります。
コール買い:
コールオプションを買えば、満期までに特定の価格(権利行使価格)でインデックスを買う権利が与えられます。これは義務ではありません(不利ならば放棄できる=買わなくてもよい)。例えば、下掲の例では、11月15日に満期を迎える権利行使価格5,800のSPXコール(C5800)を買うには、12,910ドル(129.10ドル×100)のプレミアムを支払う必要があります。S&P 500が大幅に上昇した場合に利益を得られる可能性があります。
しかし、このコールオプション(C5800)の損益分岐点は5,929.10であり、これが利益になるためにはS&P 500がその損益分岐点を超える必要があります。市場が現在約5,800で取引されていることを考えると、このポジションが満期までに損益分岐点を超えるには、大幅な上昇が必要になります。これはけっして不可能というわけではありませんが、非常に投機的(運の要素が強い)な取引であり、エントリー時に費用がかなり多くかかります。
では、エントリー時のコストを削減しつつ利益の可能性を高める戦略はないのでしょうか?
市場の上昇で利益を上げる戦略はコール買い以外にも、より勝率を重視したプットクレジットスプレッド戦略というものがあります。この戦略では、権利行使価格の高いプットオプションを売り、同時に権利行使価格の低いプットオプションを買います。この戦略は、ポジションを組成した際には、差し引きでオプション料が受け取りとなり(=クレジット)、指数が高い方の権利行使価格を上回っていれば利益が出ます。
上掲のプットクレジットスプレッドの例は、満期11月15日、権利行使価格5,700のプットオプションを売り、権利行使価格5,650プットオプションを買っています。この戦略の仕組みは次のとおりです。:
最大損失額は3,970ドルです(権利行使価格の差額5,000ドル-受取プレミアム1,030ドル=3,970ドル)。
この場合、S&P 500が5,700を超えていれば(現在価格より多少下落したとしても)、受け取りプレミアム分全額、すなわち最大利益1,030ドルを得ることができます。市場が5,700を下回った場合でも、最大損失は3,970ドルであり、これはコール買い戦略の場合のコストよりも大幅に低くなっています。
プットクレジットスプレッド戦略は、コール買い戦略に比べてよりコスト(最大損失額)を抑えつつ、選挙後の市場が中立(多少の下落も許容)から上昇するという予想を実現できるのです。これは、確率に基づいた戦略であり、選挙によって市場が急騰する可能性のある場合おける、より優れたリスク・リターンを持つ戦略と言えるでしょう。
6. 利用可能なインデックスオプション一覧
これらのインデックスオプションは、幅広い市場をその対象とし、原資産の株価変動からのポートフォリオの損失をヘッジするための効果的なツールですが、これらの商品の中にはビッドアスクスプレッド(買い気配と売り気配の価格差)が広いものもあることに注意することが重要です。スプレッドが広い場合は、流動性が低いことを示しており、商品を積極的に取引する買い手と売り手が少ない可能性があることを意味します。買い価格と売り価格の価格差が大きいと、エントリーとエグジットにおいてコストがより多くかかることになります。この場合、スプレッドのコストが収益性を低下させることがあることはもとより、利益を失う可能性すらあるため、インデックスオプションの様々な戦略が常に実行可能であるとは限りません。
来たる米国大統領選挙は、トレーダーにとってリスクとチャンスの両方をもたらします。SPX、NDX、RUT などのインデックスオプションを使用することで、ポートフォリオをヘッジしたり、選挙による大きな株価変動(ボラティリティ)から利益を得たりすることができるわけです。プロテクティブプット、プットデビットスプレッド、コール買い、プットクレジットスプレッドなどの戦略を理解することは、選挙シーズンにおける不確実性下の市場において戦うのに役立つはずです。これらの戦略を持つことで、大きな株価変動のある市場においても自信を持って戦略的に戦うことができるでしょう。