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Chief Investment Strategist
11月の米国大統領選挙を控え、大統領選挙と株式市場がどのように連動するかを検討したいと思います。市場が選挙に影響を与えるのか、大統領が市場に影響を与えるのか、それともこの2つはまったく無関係なのでしょうか?答えはその中間にあります。
今回は、1972年以降に行われた13回の大統領選挙を取り上げます。この期間は、1971年にいわゆるブレトンウッズ体制が崩壊し、米ドルと金の連動が解除されたことに続くもので、市場の力学が根本から変化しました。13回の選挙は統計的有意性を確立する上では不十分なので、どのような結論も割り引いて理解する必要があります。また、1980年、1996年、2008年などの異常な年が結果をどの程度過大評価または過小評価するのかという点についても疑問の余地があるため、ここで得られる結論も参考程度のものとして見るべきかと思います。13回の大統領選挙のうち、7回は共和党が勝利し、6回は民主党が勝利しました。現職大統領が勝利した選挙が5回、政権交代となった選挙が7回、現政権政党から新大統領が誕生した選挙が1回です。
最初の疑問は、選挙がある年の市場のパフォーマンスは、他の年と異なるのか、という点です。現職大統領は、見栄えを良くするために経済を下支えすることに全力を尽くすと考えるのが妥当でしょう。
一見するとこの仮説は確かに正しいようです。なぜなら、選挙年のS&P500の平均利回り(配当金の再投資は含みません)は平均8.7%であるのに対し、他の年は7.7%だからです。ですが、いつものように魔物は細部に潜んでいます。というのも、数学の概念上、選挙年の平均利回りを他の年と比較することが不可能だからです。これを修正するために、これら13年間の利回りに関するデータをつなぎ合わせ、選挙期間中の総合的な複利リターンを計算します。すると、選挙年の年率利回りは年率7.8%となり、これは選挙のなかった年の複利リターンに非常に近く、選挙の有無で大きな差がなかったことを意味します。
次に思いつく疑問は、株式や株価のパフォーマンスが、選挙でどちらの陣営が勝利するかを示すことができるのか、という点です。結局のところ、株式市場は景況感や経済見通しを測る最良のバロメーターの一つです。将来についての総合的な意見をまとめたものであり、したがって選挙日に向けて株価が上昇するということは見通しの改善を示しており、理論的にはホワイトハウスを支配する政党にとってはプラスとなるはずです。ここでは、政権交代があった選挙年となかった選挙年のS&P500の年間利回りを調べました。
上の図に基づくと、米国株式市場が堅調であれば、ホワイトハウスを掌握している政党にとって追い風になるという主張も弱いながらも成立します。しかし、株式市場のパフォーマンスと選挙の勝者の間に何らかの因果関係があると結論付けることはできません。
最後の疑問は、市場が共和党大統領と民主党大統領のどちらを好むかという点です。これを調べるため、選挙日の翌年のS&P500の利回りに着目しました。
興味深いことに、民主党大統領が選出された場合、選挙の1年後には利回りが大幅に高くなっていることが観察されました。しかし、本記事の大前提として、これらの結果はある程度、1976年、1996年、2020年といった異常な年の結果であるため、これだけを見て判断しないことが重要です。
今回の分析に基づくと、最も有力な結論は、ブレトンウッズ体制の崩壊以来、何らかの決定的な結論を得られるほど選挙は十分に行われていないということです。手元のデータでは、選挙の年と他の年の株式市場のパフォーマンスに大差はないことが示されていますが、株価が好調な年には現職政党が政権を維持する傾向があります。最後に、選挙の翌年については、過去13年間で民主党大統領が就任した場合の方が共和党大統領の場合よりも市場のパフォーマンスが良かったのは確かですが、この結果も政党政治とは無関係の出来事で歪められているようです。