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コモディティ戦略責任者(Saxo Group)
サマリー: 今年は金、銀、プラチナ、銅、アルミニウムを中心に金属の年になる可能性があります。貴金属については、実質利回りの低下見通しや無利息のポジションの保有コスト低下が、過去7四半期にわたって投資家が売り越している上場商品などを通して需要を下支えする、と当グループは考えています。工業用金属は供給の混乱、資金調達コストの低下に伴う業界の在庫補充、中国以外の低迷を相殺する中国の需要の継続的な伸びにより恩恵を受ける立場となるでしょう。特に、勢いを増しつつあるグリーン・トランスフォーメーションがこの需要を牽引し、2024年に経済見通しの悪化の影響を被る可能性のある従来のエンド・ユーザーの銅・アルミ需要に取って代わる場合もあるとみられます。
2023年の予想外に力強いパフォーマンスに続き、2024年もさらなる価格の上昇が予想されます。価格上昇の要因は、モメンタム・ドリブン型のヘッジファンド、記録的なペースで地金を買い続ける中央銀行、資産運用会社などETF投資家による需要の再燃の3つです。ここ2年近くの間、実質利回りが上昇しキャリー・コストが増加する中でこれらの要因は見られませんでした。
米連邦準備制度理事会が利下げに舵を切ろうとしていますが、現在予想されている利下げ回数はソフトランディングの場合に妥当なもので、ハードランディングや景気後退が起きればさらに大幅な利下げが必要になります。中央銀行によるこの2年間の記録的な買いが、実質利回りの急上昇にもかかわらず金が上昇した主な理由であり、調整局面で銀がより大幅に下落した理由です。銀には、金のように持続的な基礎的需要がありませんでした。金は、ETFで需要の回復が見込まれることや、中央銀行の買いが継続し、おそらくドル安によっても支えられることから、過去最高値を更新し2,300ドルに達する可能性があります。銀は、銅相場で見込まれる上昇にも支えられ、2021年の高値30ドルに挑戦する可能性があります。そうなれば、金・銀比率は10年平均を下回り78.3前後に低下するでしょう。
プラチナでは、価格弾力性がほとんどない需要と非経済的な供給が削減されるリスクとが相まって、供給不足の悪化と市場環境の逼迫を招く可能性があります。これがETF保有を4年ぶりの低水準から回復させる一因となり、2024年のプラチナは銀と同様、金よりも好調に推移する見通しです。プラチナのディスカウント幅は250ドル縮小し、5年平均の1オンス約750ドルに向かう可能性があります。
工業用金属セクターも、長い間待ち望まれた中国から世界に向けた工業用在庫の補充が資金調達コストの低下により進展する見通しとなり、その恩恵を受けるとみられます。当社は工業用金属の中では依然として銅を選好しています。去年の中国で見られたように、銅に対する旺盛な需要が見込めるためです。この需要により、取引所がモニタリングしている在庫は数年ぶりの低水準で推移しています。供給の混乱や生産の下方修正のリスクも高まっています。
供給に大きな混乱が生じており、特に、複数の用途に使用され「グリーン・メタルの王様」と呼ばれる銅の供給混乱は顕著です。これらの混乱は、ファースト・クォンタム(First Quantum)が運営するコブレ・パナマ鉱山の政府による強制閉鎖などによって生じました。リオ・ティント、アングロ・アメリカン、サザン・コッパーなどの他の鉱山会社もすべて、主にペルーとチリでの問題の発生を理由に生産を下方修正しています。鉱業業界は全体として、コスト上昇、鉱石のグレード低下、政府の介入増といった課題を抱えていることが分かります。
鉱山会社が今後数年の間に様々な課題に直面し、中には総生産コストを上昇させ、収益性に影響を与えるものもあることを考慮し、当面、当グループは、主にETFを通じた金属自体への直接的なエクスポージャーを選好しています。