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チーフ・インベストメント・ストラテジスト
米国では過去2年のほとんどの期間、株価上昇のほぼ全てを牽引してきたのは「マグニフィセント・セブン(Mag 7)」、つまりNvidia、Apple、Microsoft、Alphabet、Amazon、Meta、Teslaでした。現在はこの7社でS&P500の時価総額のほぼ30%を占めています。そのためポートフォリオがこうした銘柄や米国株全体に大きく偏り、投資の分散が制約を受けています。
しかし、これには変化が現れているようです。もはや増益は、Mag 7銘柄の多くが入るITセクターや一般消費財セクターだけに集中しているわけではありません。2025年には2018年以来初めて、S&P500の全セクターが増益になると予想されています。市場においてリターンの牽引役の中核にあるのは引き続きITですが、ヘルスケアや資本財、素材、エネルギーといったセクターでも、ポテンシャルが拡大しています。こうしたセクターは、インフラ投資やサプライチェーンの国内回帰、イノベーションが組み合わさることで、その恩恵を受けやすい立場にあります。
特にヘルスケアは、強い収益期待や魅力的なバリュエーション、また人口の高齢化や医療技術の進歩といった構造的な追い風を考えると、有望と思われます。資本財と素材は、AI主導型の産業プロセスやインフラ関連プロジェクトへの継続的な投資から、恩恵を得やすい立場にあります。エネルギ-企業には、AI向け発電関連企業を含め、改めて投資家の関心が集まるでしょう。
とはいえ、ITセクターの大きさには変わりがありません。IT主導の次の行程は、現実世界へのAI導入を実証する企業が焦点になるでしょう。このセクターの今後のパフォーマンスは、熱狂的な誇大宣伝先行のバリュエーションではなく、AIが主導する効率化によって測定可能な成果を実現できるかにかかっています。
ポートフォリオが米国株、特にマグニフィセント・セブンに集中しており、分散投資、または大きな成長に向けた新たな機会を求めるのであれば、米国外に目を向けることが投資家にとって得策かもしれません。欧州市場とアジア市場にはそれぞれ課題もありますが、米国に比べればはるかに大きなバリュー投資の機会があります。
欧州株は、ユーロ圏経済の低迷や関税リスク、地政学的・政治的緊張の継続に対する懸念を反映して、米国に対して大幅なディスカウントで取引されています。欧州における「セブン・ワンダーズ」、つまりHermès、Novo Nordisk、Siemens、LVMH、SAP、ASML、Schneider Electricのパフォーマンスは、米国のマグニフィセント・セブンほどではないとしても、市場平均を上回っています。欧州では全てのセクターにおいて、米国株に対するディスカウント率が過去の平均を上回っています。今後を見ると、MSCIヨーロッパは増益率が2024年に1.3%、2025年にはIT、一般消費財、ヘルスケアが牽引役となり6.6%に加速すると予測されています。その他にも主な成長分野としては電動化、再生可能エネルギー、産業革新などがあり、こうした分野で欧州企業は世界をリードしています。
一方、アジアを見ると、中国には急反発の可能性があります。株価は魅力的であり、需要主導の財政緩和や関税を巡るトランプ政権との取引についてなんらかの兆候があれば、たちまち急上昇が始まることもあり得るでしょう。しかし、こうした機会は構造的な機会というよりは、戦術的なものにとどまります。デフレや巨額の債務、消費マインドの低迷といった根強い問題が、長期的な見通しの重しになっています。加えて、経済や市場において政府による介入の役割が大きいことが不透明性の原因になっており、有効な改革が実行されない限り、中国株は構造的な投資の観点からの魅力が低いものとなります。
一方、日本での機会はより選択的なものになります。日本銀行(BOJ)が7月に政策を転換してから、日本株は一時的に調整が入りましたが、その後、回復しています。バリュエーションは魅力が低下し、市場は全般的に、世界的な需要の低下と円高というリスクに直面しています。しかし、金利上昇の恩恵を受ける銀行業や、政府の産業政策と関連が深い工業関連企業などのセクターは、機会を求める対象になるでしょう。またコーポレートガバナンス改革も、日本株にとって、特にそれが株主還元の向上を進めている企業であれば、引き続き長期的な追い風になります。
新興市場への投資機会を求める投資家にとっては、ベトナムのような国が価値を持つかもしれません。ベトナムは、企業が貿易戦争リスクのある中国以外への分散を図る中で、グローバルサプライチェーンの再編成による恩恵を得やすい立場にあります。
トランプ政権の再来には、政策的なリスクと戦術的な機会が混在しています。トランプ政権が重視する課題は以下のとおりですが、マーケットは不確実性の拡大への対応に追われることになるでしょう。
トランプ2.0の影響を最も直接的に受けるセクターは、主に以下のものです。
FRBの利下げが9月以降で100ベーシスポイントに上るにもかかわらず、長期利回りの動きはこれに逆行しています。10年物国債利回りはこれとほぼ同じだけ上昇し、4.60%前後で推移しています。米国経済は堅調であり、また共和党が圧勝した選挙結果を受けて財政リスクも高まっているため、利回りが再び5%の節目を試す可能性は十分あり得ます。
これが株式にとって重要な意味を持つのはなぜでしょうか?債券利回りが上昇すれば企業の借入コストは上昇し、利益率を圧迫して企業収益を悪化させることになります。レバレッジが大きい、あるいは金利感応度が高いセクター、例えば不動産や公益事業、小型株などは、特に大きな影響を受けます。
ただし、検討すべき主なシナリオは2つあります。
つまり、企業収益が悪化するには、異常に高い金利が長期にわたって続く必要があります。投資家にとっては、債券利回りの上昇にも機会があります。2020~2023年の期間と異なり、現在は債券の実質金利がプラスであり、リターンがインフレ率を上回っています。このため、債券はインカム重視の投資家にとって魅力的な選択肢になっています。さらに、コモディティや不動産、金などの実物資産は、トランプ政権下で財政支出が増加した場合にも、インフレに対するヘッジになるでしょう。