有形資産と収益性の高い成長が勝者に

有形資産と収益性の高い成長が勝者に

Peter Garnry

Chief Investment Strategist

サマリー:  過去6か月間に、一生のうちに起こるかどうかという市場心理の最大の変化が確認され、金融市場と経済は、もしいたとしても(ウォーレン・バフェットとチャーリー・マンガーは例外だったかも知れません)少数の投資家以外はこれまで経験したことがない状態に投げ出されました。私たち全員が、おそらく困難な状況へと脱線することになる暴走列車に乗っていると思われることから、こうした状況は、それ自体で自信喪失と警戒心を引き起こしています。


今回はV字型回復は起こらない

残念ながら、今日の投資家の記憶は、過去10年間、とりわけ過去5年間の途絶えることのない強気市場によって形作られてきました。その結果、世界がほぼ間違いなく突き当たった物理的な限界の影響に対処する過程で起こり得ることについて、本当に準備ができている投資家はほとんどいません。中央銀行と企業は、柔軟で拡大し続ける供給関数に慣れていました。しかし、世界経済の供給関数は、無理もない理由で非弾力的になっており、このことは需要のプッシュがインフレに直結することを意味します。

エネルギーと食糧危機の急激な進行、手に負えないインフレと、世界全体での歴史的な金利引き上げの動きにもかかわらず、MSCIワールドインデックスの評価は依然として、5月末までのその歴史的平均値を上回っていました。現在の見通しと金利水準を考慮すると、MSCIワールドの株式評価は平均値を下回っているべきです。グローバル企業の利益は2021年第2四半期のピークから既に10パーセント減少しており、見通しは楽観的ではありません。それにもかかわらず、アナリストは、利益水準を18パーセント上回るS&P500の12か月1株あたり利益(EPS)の見積りを示しています。時折の短期的なV字型回復で中断するに過ぎなかった12年以上にわたる途絶えることのない強気相場は、押し目買いのメンタリティとより多くのリスクテイクを強めてきました。投資家はその見解を更新するのが遅いだけで、リテール投資家の行動に大きな変化は確認されていませんが、それも、現在の株式市場の下落余地がより大きい理由になっています。
出典:Bloombergおよびサクソグループ
出典:Bloombergおよびサクソグループ
S&P500トータルリターンインデックスは6月16日現在23パーセント下落しており、米国株式が正式に弱気市場になっていることを意味します。大きな疑問は以下のとおりです。現在のドローダウンのボトムにはいつどこで到達するか。当社のベストの推測は、今回のドローダウンを最もよく表す動力学が、現在のコモディティ危機とテクノロジー株式の破裂に照らして、ドットコムバブルと、1973年から74年のエネルギー危機のドローダウンの時期のものであるということです。現在の情報に基づく当社のベストの推測は、S&P500がピークから約35パーセント調整し、底を打つまでに12か月から18か月かかる(つまり、今年後半から2023年前半のどこかの時点になる)というものです。

セコイア・キャピタルは、同社が投資している創業者と企業向けの2022年5月16日の52ページのプレゼンテーションで、次のように述べています:「今は試練の瞬間です。・・・回復にはより長くかかるでしょう。・・・資本コストは極めて低水準でしたが、今では高価です。・・・いかなる代償を払っても成長するという方法は、報われなくなりました。」 セコイア・キャピタルの見解の最も重要な点は、企業が今後報われるのは売上高の成長ではなく、投下資本利益率とフリーキャッシュフローの改善だという点です。今回はV字型回復は起こらないと思われ、投機的なグロース株、アーク投資ファンド、テスラと暗号通貨にすべてを投資した新たな世代の投資家が完全に降伏するまで、弱気市場が自然に終わる可能性は低いでしょう。
出典:Bloombergおよびサクソグループ

エネルギーの再生はESGの危機を引き起こす可能性がある

第1四半期のQuarterly Outlookでは、エネルギーセクターの期待リターンが世界の株式市場で最も高いと述べました。この予想は的中しました。エネルギーセクターは、今年上昇している唯一のセクターです。その要因は、供給不足による石油・ガス価格の高騰ですが、その供給不足は長年にわたる過少投資の結果です。さらに最近では、ロシアに対する制裁に由来して世界の供給量が相当減少しています。S&P500のエネルギーセクターは年初から6月16日までに42パーセント上昇した一方、S&P500は同期間中に23パーセント下落しました。MSCIワールドインデックスでは、エネルギーセクターは2008年の原油価格のピークの時期におけるウェイト13.5パーセントという最大のセクターの一角から、2020年10月にはウェイト2.4パーセントの最小セクターに変化しました。mRNAワクチンの市場への投入以来、需要は急激に回復し、原油価格をユーロ建ての史上最高値に押し上げるとともに、投資水準の低さによる原油供給と製油所の能力の弾力性の低さを明らかにしました。エネルギーセクターの利益が確認されており、市場価格が急上昇した結果、同セクターのウェイトは2022年5月に5.2パーセントまで押し上げられました。

金融危機以降、テクノロジー株式が、低下し続ける金利、テクノロジー株式をオーバーウェイトにするESGファンドからの資金流入とマージンの拡大を享受してきた一方で、エネルギー株式は投下資本利益率の低さに苦しんできました。テクノロジー株式のロングと石油・ガスのショートは、14年間にわたって完璧なトレードとなり、投資家の考え方を強めました。エネルギーセクターとアーク・イノベーションETFの逆方向のパフォーマンスにご注目ください。今では、世界が現在もディーゼルとガソリンで動いていること、そして、成長し続ける私たちの富が不都合なことに炭素排出量の増加と結び付いていることを世界が認識した結果、状況は逆転しています。エネルギーセクターが他のセクターと比較して1パーセントポイント上昇するごとに、ESGはパフォーマンスに関してより大きな圧力を受けることになり、化石燃料の復活は、新たなインフレ時代の最中で、パフォーマンスの不振と天然資源へのエクスポージャーの不足に関連する資金流出に苦しむESGファンドの危機を生じさせる可能性があります。

出典:Bloombergおよびサクソグループ
出典:Bloombergおよびサクソグループ

有形資産がアウトパフォーム

当社のテーマバスケットにわたって2022年6月16日現在の年初来パフォーマンスに注目すると、何が際立っているかがはっきりと分かります。現在の供給サイドのインフレの主要因であるコモディティと、ウクライナでの戦争に起因する欧州の軍事支出の増加の受け取り側となる防衛関連株だけが、上昇しているテーマバスケットです。マイナスになっているすべてのバスケットの中の上位2つのテーマバスケットは、物流と再生可能エネルギーです。当社は、現在のドローダウンで株式がボトムに達するまで、これらのテーマが好調を持続すると予想しています。今年のパフォーマンスが最悪のテーマは、暗号通貨・ブロックチェーン、電子商取引、バブル株式、次世代医薬品と決済です。その背後では、物理的世界の供給制約が物理的な資本財とコンポーネントの価格を押し上げているために、無形資産の株式の評価を非常識なほど高い水準から圧迫する資本コスト上昇の関数として、有形資産が全般的に無形資産をアウトパフォームするというメカニズムが作用しています。

有形資産のアウトパフォーマンスの唯一の例外は不動産です。同セクターは、「他に選択肢はない」トレードに吸い込まれた物理的世界の一部です。これは、過剰な水準の住宅の評価と、CBREによれば、2021年下半期の(パンデミック直前の6.4パーセントから低下した)わずか5.4パーセントという低さの米国の(すべてのセグメントにわたる)キャップレートをもたらしました。米国と欧州の多くの都市部では、低金利と供給の逼迫が相まって、短期的な金利上昇に対して極めて脆弱な位置まで不動産を押し上げてきました。

1970年代の米国の住宅価格に注目すると、追跡されたインフレ率はゼロという実質収益率(購買力の維持)に換算され、この時期にインフレに追い付けなかった株式よりもはるかに良好なパフォーマンスでした。
通常のインフレサイクルでは、当社は購買力の維持を理由として不動産について前向きになると思われます。しかし、非常に低い金利と歴史的に高い不動産の評価からスタートし、金利の大幅な変化をそれと組み合わせると、有形資産であるにもかかわらず、不動産について前向きに考えることは難しくなります。

サクソの株式テーマのパフォーマンスの概要
年初来のリターン順(リターンのデータはすべて2022年6月16日現在)
Peter-table

出典:Bloombergおよびサクソグループ 

サクソバンクの外国株式

口座開設は無料。オンラインで簡単にお申し込みいただけます。 

最短3分で入力完了!

【ご留意事項】

■当資料は、サクソバンクグループのアナリストによるマーケット分析レポートの転載、もしくは外部のアナリストからの寄稿となっております。
■当資料は、いずれも情報提供のみを目的としたものであり、特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
■当資料は、作成時点において執筆者またはサクソバンク証券(以下「当社」)が信頼できると判断した情報やデータ等に基づいていますが、執筆者または当社はその正確性、完全性等を保証するものではありません。当資料の利用により生じた損害についても、執筆者または当社は責任を負いません。 
■当資料で示される意見は執筆者によるものであり、当社の考えを反映するものではありません。また、これら意見はあくまでも参考として申し述べたものであり、推奨を意味せず、また、いずれの記述も将来の傾向、数値、投資成果等を示唆もしくは保証するものではありません。 
■当資料に記載の情報は作成時点のものであり、予告なしに変更することがあります。 
■当資料の全部か一部かを問わず、無断での転用、複製、再配信、ウェブサイトへの投稿や掲載等を行うことはできません。
■上記のほか、当資料の閲覧・ご利用に関する「免責事項」をご確認ください。 
■当社が提供するデリバティブ取引は、為替相場、有価証券の価格や指数、貴金属その他の商品相場または金利等の変動によって損失を生じるおそれがあります。また、お預けいただく証拠金額に比べてお取引可能な金額が大きいため、その損失は、預託された証拠金の額を上回る恐れがあります。
■当社が提供する外国証券取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。手数料については、「取引金額×一定料率」又は「取引数量×一定金額」で求めた手数料が一回の取引ごとに課金されます。ただし手数料の合計額が当社の定める最低手数料に満たない場合は、手数料に代えて最低手数料を徴収させていただきます。また取引所手数料等の追加費用がかかる場合があります。 
■取引にあたっては、取引説明書および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。 
■当社でのお取引にかかるリスクやコスト等については、 こちらも必ずご確認ください。

サクソバンク証券株式会社
Saxo Bank Securities Ltd.
Izumi Garden Tower 36F
1-6-1 Roppongi Minato-ku
Tokyo 106-6036
〒106-6036 東京都港区六本木1-6-1
泉ガーデンタワー36F

お問い合わせ

国・地域を選択

日本
日本

【重要事項及びリスク開示】

■外国為替証拠金取引は各通貨の価格を、貴金属証拠金取引は各貴金属の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、売買の状況によってはスワップポイントの支払いが発生したり、通貨の金利や貴金属のリースレート等の変動によりスワップポイントが受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■外国為替オプション取引は外国為替証拠金取引の通貨を、貴金属オプション取引は貴金属証拠金取引の貴金属を原資産とし、原資産の値動きやその変動率に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、オプションの価値は時間の経過により減少します。また、オプションの売り側は権利行使に応える義務があります。
■株価指数CFD取引は株価指数や株価指数を対象としたETFを、個別株CFD取引は個別株や個別株関連のETFを、債券CFD取引は債券や債券を対象としたETFを、その他証券CFD取引はその他の外国上場株式関連ETF等を、商品CFD取引は商品先物取引をそれぞれ原資産とし、それらの価格の変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、建玉や売買の状況によってはオーバーナイト金利、キャリングコスト、借入金利、配当等調整金の支払いが発生したり、通貨の金利の変動によりオーバーナイト金利が受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■上記全ての取引においては、当社が提示する売価格と買価格にスプレッド(価格差)があり、お客様から見た買価格のほうが売価格よりも高くなります。
■先物取引は各原資産の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。
■外国株式・指数オプション取引は、対象とする有価証券の市場価格や対象となる指数、あるいは当該外国上場株式の裏付けとなっている資産の価格や評価額の変動、指数の数値等に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、対象とする有価証券の発行者の信用状況の変化等により、損失が発生することがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。さらに、外国株式・指数オプションは、市場価格が現実の市場価格等に応じて変動するため、その変動率は現実の市場価格等に比べて大きくなる傾向があり、意図したとおりに取引ができず、場合によっては大きな損失が発生する可能性があります。また取引対象となる外国上場株式が上場廃止となる場合には、当該外国株式オプションも上場廃止され、また、外国株式オプションの取引状況を勘案して当該外国株式オプションが上場廃止とされる場合があり、その際、取引最終日及び権利行使日が繰り上げられることや権利行使の機会が失われることがあります。対象外国上場株式が売買停止となった場合や対象外国上場株式の発行者が、人的分割を行う場合等には、当該外国株式オプションも取引停止となることがあります。また買方特有のリスクとして、外国株式・指数オプションは期限商品であり、買方がアウトオブザマネーの状態で、取引最終日までに転売を行わず、また権利行使日に権利行使を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。また売方特有のリスクとして、売方は証拠金を上回る取引を行うこととなり、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。売方は、外国株式・指数オプション取引が成立したときは、証拠金を差し入れ又は預託しなければなりません。その後、相場の変動や代用外国上場株式の値下がりにより不足額が発生した場合には、証拠金の追加差入れ又は追加預託が必要となります。また売方は、権利行使の割当てを受けたときには、必ずこれに応じなければなりません。すなわち、売方は、権利行使の割当てを受けた際には、コールオプションの場合には売付外国上場株式が、プットオプションの場合は買付代金が必要となりますから、特に注意が必要です。さらに売方は、所定の時限までに証拠金を差し入れ又は預託しない場合や、約諾書の定めによりその他の期限の利益の喪失の事由に該当した場合には、損失を被った状態で建玉の一部又は全部を決済される場合もあります。さらにこの場合、その決済で生じた損失についても責任を負うことになります。外国株式・指数オプション取引(売建て)を行うにあたっては、所定の証拠金を担保として差し入れ又は預託していただきます。証拠金率は各銘柄のリスクによって異なりますので、発注前の取引画面でご確認ください。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、取引証拠金を事前に当社に預託する必要があります。取引証拠金の最低必要額は取引可能な額に比べて小さいため、損失が取引証拠金の額を上回る可能性があります。この最低必要額は、取引金額に対する一定の比率で設定されおり、口座の区分(個人または法人)や個別の銘柄によって異なりますが、平常時は銘柄の流動性や価格変動性あるいは法令等若しくは当社が加入する自主規制団体の規則等に基づいて当社が決定し、必要に応じて変更します。ただし法人が行う外国為替証拠金取引については、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第27項第1号に規定される定量的計算モデルを用いて通貨ペアごとに算出(1週間に1度)した比率を下回らないように当社が設定します。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、損失が無制限に拡大することを防止するために自動ロスカット(自動ストップロス)が適用されますが、これによって確定した損失についてもお客様の負担となります。また自動ロスカットは決済価格を保証するものではなく、損失がお預かりしている取引証拠金の額を超える可能性があります。
■外国証券売買取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。
■取引にあたっては、契約締結前交付書面(取引説明書)および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。

サクソバンク証券株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第239号、商品先物取引業者
第一種金融取引業、第二種金融商品取引業
加入協会/日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、日本投資者保護基金、日本商品先物取引協会
手数料:各商品の取引手数料についてはサクソバンク証券ウェブサイトの「取引手数料」ページや、契約締結前交付書面(取引説明書)、取引約款等をご確認ください。