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グローバルマクロ戦略責任者
サマリー: 地政学は、今週末のドイツ選挙だけでなく、日銀にとっても引き続き最重要課題となっています。それが、ここで円が急騰した理由なのでしょうか?
トランプ政権の騒乱、トランプ2.0、31日目
トランプ大統領とトランプ政権は、トランプ大統領のゼレンスキー大統領に対するウクライナ大統領がロシアとの戦争を開始したとする厳しい批判から、米政府効率省(DOGE)が政府支出で節約するすべてのお金について全アメリカ人に5,000米ドルの小切手を渡すという考えを(特別政府職員を務める)イーロン・マスク(Elon Musk)氏が浮かべていることまで、昨日から流れる最新のニュースの見出しが市場を支配し続けています。ロシアとのいかなる取引においても、米国がウクライナをどの程度支援するかは、私が以前のコメントで概説したように、EUの見通しとユーロにとって重要です。EUの長期債利回りの急上昇は、欧州の大幅な財政拡大を示唆しており、特にドイツは赤字がほとんどない一方で、赤字を抱えたフランスの予算は優先順位の大幅な転換を余儀なくされるでしょうが、フランスの政治的背景は機能不全となっているため、実行するのは難しいでしょう。
さらに良いことに、米国務省は最近、中国の名前の一部を指す「人民共和国(People‘s Republic of)」を削除して、中国を冷遇しました。さらに憤慨深いことに、米国務省は最近、台湾との関係に関するファクトシートから「我々は台湾の独立を支持しない」という文言を削除しましたが、これはすでに中国の反応を招いています。しかし、トランプ大統領は昨日、バイデン前大統領が中国に以前の取引を順守するように促さなかったと非難した後、中国とのより大きくより良い取引を求めると宣伝していました。
昨日公表されたFOMC議事録では、量的引き締め(QT)の縮小または一時停止の議論がされていたことが明らかになり、利回りがわずかに低下したため、米ドルの上昇に歯止めがかかりました。この議論は、米議会が支出協定に合意できず、債務上限が再び機能した場合、FRBが準備預金残高への懸念からQTを停止しなければならないことは避けられないと幅広くみられているため、大きな驚きではありません。
本日の注目点:米ドル/円(USDJPY)は、今夜の日本の消費者物価指数(CPI)を前に下落します。なぜでしょうか。
米ドル/円(USDJPY)は、一晩で大幅に下落し、150.93のレンジサポートを簡単に切り抜けました。この動きの直接的な引き金としては、米国債の控えめながらも好調な上昇を除いてはありませんでした。日本では今夜、1月の消費者物価指数(CPI)が発表され、これは今後の金利決定における重要な材料になるとされていますが、日銀は進行中の賃金交渉の結果が最も決定的な要因の一つと強調しています。しかし、ここでの円(JPY)のその後の上昇の力は、別の要因によるものなのでしょうか。日本政府が日銀の政策金利の水準、特に円(JPY)の価値の水準を米トランプ政権との関係における重要な材料と見なすことについて、市場は疑っているのでしょうか。つまり、日本は長期にわたって対米貿易黒字が持続しており、対米ドルで通貨が非常に弱く、政策金利もゼロから脱却したとはいえ非常に低い水準となっています。もし今、円高が単に市場原理に任せられるのではなく、国家の優先事項となれば、日本政府が一丸となって目立った変化を起こそうと努力する中で、日本円は米国長期債利回りの水準といった通常の一致指数に比べて強くアウトパフォームする可能性があります。日本の会計年度末から3月までのボラティリティも力強い円の要因となる可能性があります。これは、この段階では推論に基づく憶測です。進行中の値動きと、CPIデータの前後に1ドル150.00円の水準を切り抜けることができるかどうか、および一致指数(つまり、CPI)に対するフォローアップの動きは、この仮説が益々いい線をいっている(あながち間違いではない)ということの証左となるでしょう。
興味深いデータ:火曜日、米財務省が発表した12月の米国債の海外保有額に関するデータによると、日本の保有高は270億米ドル減少し、2019年以来の低水準に達したことが示されました。現在の保有額は、2021年の最高値である1兆3,250億米ドルに対して1兆600億米ドルとなっています。1月の同データは、3月19 日に発表される予定です。
チャート:米ドル/円(USDJPY)
月曜日の前回の更新記事では、米10年物国債利回りの指標が4.25%に向かって下落した場合、米ドル/円(USDJPY)が140.00までブレイクする可能性があるかどうかについて考察しましたが、私はこれが、米国の利回りが急激に低下した場合の米ドル/円(USDJPY)の潜在的な結果の公正な評価である(十分あり得る)と引き続き信じています。しかし、上で述べたように、米国の利回りが単にかなり静かで、急激に上昇しない限り、米トランプ政権の目から見て、日本が自国通貨と極端に低い利回りを負債として注目していると市場が感じれば、米ドル/円(USDJPY)は売り続け、米国債利回りの見通しと乖離する可能性があります。日本の1月全国消費者物価指数(CPI)の発表が今夜発表されますが、市場が月次データにどれだけ敏感に反応するか、米ドル/円(USDJPY)の永続的な再格付けの可能性(最終的には1ドル125-130円の領域まで上昇する可能性があるが、まずは1ドル148.65円を決定的に切り抜けた場合、次は1ドル140.00円の水準に注目する)の試金石となります。
ドイツ連邦議会選挙に向けて
今週の日曜日の選挙は、注目に値するでしょう。世論調査では、「ドイツキリスト教民主同盟(CDU)」についてはおそらく30%の票を獲得するという強力なカムバックが期待されていますが、「ドイツのための選択肢(AfD)」(世論調査によると、約20%の票獲得予想)が政治的に不可触政党と見なされていることを考えると、CDUが政権を樹立するためには、「ドイツ社会民主党(SPD)」(約16%)または「緑の党(Greens)」(13%)と連立を組む必要があります。連邦議会(Bundestag)での党の代表の5%の閾値を確実に達成した他の政党は、「左翼党(Die Linke)」(約7%)だけです。この閾値を念頭に置いて、連邦議会の議席率は、代表権を持たない5%未満の政党に投票した票の割合に基づく一般投票の割合よりも大きいことに注意してください。つまり、12%の票が閾値をクリアしていない政党に行った場合、議席数が約12%増加することになります。
簡単に言うと、悪夢のようなシナリオは、中道派の3党(CDU、SPD、Greens)すべてが団結して、ポピュリストの右派と左派の政党を政府から締め出さなければならないというものです。これは、結果にほとんど満足感を与えませんが、ここでの全体的な考え方は、SPD/Green連立政権に属すると醜い叱責を受け、結局、その新政府の連立政権がすぐに終わってしまうだろうことが意図されています。
二重の悪夢のシナリオは、CDU党、SPD党、Green党の3党全てが、実際の得票数が世論調査の予想よりも各党で2%以上下回り、AfD党が25%近く、Die Linke党がおそらく8%以上を得票し、5%の閾値をクリアすることに成功した左派ポピュリストのザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)党が連立に加わる場合です。
ドイツの選挙に対する市場の反応
政治的な結果にかかわらず、厳しい地政学的状況により、今後数年間でドイツは大規模な財政拡大を余儀なくされるでしょう。短期的には、ドイツが伝統的な財政保守主義と「債務ブレーキ」ルールをどれだけ早く捨て去るかが問題となるでしょう。CDU党が堅実な勝利を収め、連立相手(SPD党またはGreen党)だけで政権を樹立することができれば、中道右派のCDU党はより強力な権限を得ることができ、来週月曜日に、ユーロは最もポジティブな状態になるかもしれません。上記の「悪夢」と「二重の悪夢のシナリオ」は、最初はユーロにとってネガティブと捉えられるかもしれませんが、二次的な考え方としては、「ポピュリストのオオカミ」を寄せ付けないために、3党による醜い連立政権が財政の蛇口をさらに積極的に開くことを余儀なくされることを意味する可能性があります。興味深い見方としては、AfD党が何らかの形でトランプ政権に寄り添ったと市場で見なされているかどうかという点です。なぜなら、ミュンヘン安全保障会議(Munich Security Conference)で最近行われた演説で、JDバンス氏(JD Vance)が、ヨーロッパがポピュリスト政党を疎外し、民主主義の原則に違反していると批判しており、また、イーロンマスク(Elon Musk)氏が、最近AfD党を称賛して歩き回っているからです。
主要10通貨と人民元(CNH)のトレンドの展開とその強さを示す新しい表
注:これはFXボードのトレンド・インジケータの新しいバージョンであり、古いものと非常によく似ていますが、近日中に紹介するトレンドシグナリングモデルの入力に一致するように古いバージョンとはわずかに異なる計算パラメータが使われています。また、各通貨の平均ATR(アベレージ・トゥルー・レンジ:真の変動幅)の測定値とそのヒートマップを上部の表の下に配置しました。
FXボードのトレンド測定値は相対的な尺度を示しており、ボラティリティが調整されています。各通貨について、絶対値2未満の測定値は比較的弱いトレンドであることを示していますが、3を超える測定値はトレンドが非常に強く、6を超える測定値はトレンドが非常に強いことを示しています。
円の強さは、主要通貨の中でも特に強いトレンドとなっています。
表:個々の通貨ペアの新しいFXボード・トレンドスコアボード
注:前表の集計された通貨毎のトレンド測定値と同様に、個々の通貨ペアのトレンド測定値は、旧バージョンのトレンドスコアボードの計算方法と非常によく似ているものの、新しい計算方法に基づいています。繰り返しになりますが、これらの変更は、FXボードのトレンドを近日公開予定の新しいトレンドシグナリングモデルと同期させるために行われました。最も取引されている主要な通貨ペアは上の方の表にあります。
ユーロ/スイスフラン(EURCHF)は、上昇トレンドで高水準でもみあい、結局その上昇トレンドは続きませんでした。その他の通貨では、米ドル(USD)は名目上、全体的に弱くなっていますが、米ドル(USD)ではなく円(JPY)が焦点となる中、米ドル/円(USDJPY)以外の通貨ペアでは勢いはみられません。豪ドル/ノルウェークローネ(AUDNOK)に影が付いているのはFXボードの新機能であり、現在の市場レベル(現在からその日の取引時間終了までの間に変化する可能性がありますが)に基づいて、トレンドが本日、プラスに転じることが予測されることを示しています。