GPUメーカー NVIDIAの動向をサクソバンクのアナリストが公開
ビットコイン好調やChatGPTブームに伴い株価は上昇
投資家の大きな期待がリスクをもたらす
サクソバンク(Saxo Bank A/S)の株式戦略責任者である ピーター・ガンリュー(Peter Garnry)によるNVIDIAの動向分析を発表しました。
NVIDIAは素晴らしい製品を提供する優れた企業ですが、今年初めのアニマルスピリッツや最近の銀行危機によるビットコインの上昇に支えられ、同社の株価は年初来(2023/3/22時点)で79%上昇しています。ChatGPTをサポートする大規模言語モデルはNVIDIAが提供するような超高速GPUを使って学習するため、ChatGPTの最新バージョンやビル・ゲイツの「この技術は世界を永遠に変えるだろう」というコメントもセンチメントを押し上げています。しかし、このようなバラ色の見通しにもかかわらず、NVIDIAのバリュエーションはテクノロジー・セクター全体から大きく乖離し、先走る市場にリスクをもたらしています。
銀行危機と危険なバリュエーションによって生まれた勝者
ビットコイン好調やTeslaなどの高ベータのテック株の上昇に伴い、NVIDIAの株価は年初来(2023/3/22時点)で79%上昇しています。ビットコインとNVIDIAの間には、以前から強い関連性があることがわかっています。NVIDIAのGPUはビットコインのマイニングに使用されており、ビットコインの価格変動によってNVIDIAの株価や収益に一貫したラグが生じています。NVIDIAは、この関連性を認めたことはなくコメントを拒否しています。
過去2週間の銀行危機は、ビットコインにさらなる勢いを与えています。預金システムによる危機は、ビットコインを保有する方がより安全であるとの主張を正当化する理由となっています。これはビットコインの誕生以来、初めてのことです。現時点では、金とビットコインを銀行システムの信頼性を示す指標として捉えることもできるでしょう。ビットコイン価格の上昇は採掘活動にポジティブであり、そのため市場はNVIDIAの見通しが改善に向かうことに賭けています。
▼NVIDIA share price | Source: Saxo
▼Bitcoin | Source: Bloomberg
個人投資家は、NVIDIAとテクノロジー株全般を大幅にオーバーウエイトしています。ビットコインの上昇のほか、AIやChatGPTに関連するブームもセンチメントを引き上げる要因となっていますが、NVIDIAのバリュエーションは警戒すべきレベルに達しています。NVIDIAの12ヶ月先予想EV/売上高比率は、Microsoft、Apple、Alphabet、AMD、Metaといった他の高収益テクノロジー企業の平均が5.9倍であるのに対し、現在20.7倍です。これは、有望なテクノロジー企業に対して3.5倍のプレミアムとなります。競争力の高い優れたGPUを提供するAMDとの格差は、投資家がNVIDIAに期待しすぎているというリスクを示しているに他なりません。当グループは同社の経営、技術および見通し(詳細は後述)に対してポジティブですが、たとえ良い会社であっても、投資家があまりに高いプライスを支払っている可能性もあります。株式リターンは期待値の変化によるものであり、株価のさらなる上昇は、すでに過剰な期待値を引き上げることによってもたらされるものであることを忘れてはなりません。
ChatGPTの展望
AIとChatGPTの誇大広告は、他のテクノロジー銘柄とともに下落する前の12月に同社の株価にわずかに影響を与えました。しかし今年に入り、GPT-4 のリリース(3月14日)が近づくにつれてAIブームは拡大し、これがNVIDIAの好調なパフォーマンスをもたらす次の要因となりました。ChatGPTの旧バージョンは印象的でしたが、新バージョンは、文書をアップロードしてそれについて質問するような視覚的入力のような新しいエキサイティングな機能を備えています。また、60秒で小型のPongビデオゲームをプログラミングすることも可能です。また、ChatGPT 4のプレゼンテーションでは、さまざまなトピックにおいて、その精度が格段に向上していることが確認できました。このテクノロジーは、ビル・ゲイツに「世界を変えるだろう」とまで言わしめました。
この技術はまだ重大なエラーを伴うため完璧とは言い難く、これは誇大広告が指摘される原因となっています。私たちも含め、誰もがChatGPTに興奮していますが、AGIを達成するまでにはまだ程遠いというのが現実です。しかし、初歩的な作業で生産性を向上させ、デジタルアシスタントとして、何らかの価値をもたらす可能性はあります。ChatGPTのおかげで、「プロンプトエンジニアリング」という新しい職種も生まれました。
ピーター・ガンリュー(Peter Garnry)について
2010年にサクソバンク(Saxo Bank A/S)に入社し、現在株式戦略責任者を務める。2016年には、金融市場へコンピューターモデルを応用する手法に特化したクオンツ戦略チームの責任者に就任。株式市場と個別株式の分析を行っています。
https://www.home.saxo/ja-jp/insights/news-and-research/authors/peter-garnry
サクソバンク(Saxo Bank A/S)について
1992年に設立されたサクソバンク(Saxo Bank A/S)は、オンライントレーディングのリーディングカンパニーとして積極的なIT投資を行い、テクノロジーに注力してきた金融機関です。デンマーク金融監督庁の認可を受け、同国コペンハーゲンに本社を置き、現在ではロンドン、アムステルダム、シンガポール、上海、香港、シドニー、東京、パリ、チューリッヒ、ドバイなど、世界中の金融センターに2,500人以上の従業員がいます。サクソバンクの取引・投資プラットフォームは世界180カ国以上の顧客やパートナーに70,000以上の商品を提供しています。
サクソバンク証券株式会社について
サクソバンク証券株式会社は2006年に設立され、サクソバンク(Saxo Bank A/S)の100%子会社であり、金融庁の認可を受けたオンライン証券会社です。150種類以上の通貨ペアを提供する外国為替証拠金(FX)、9,000銘柄以上を取り扱うCFD、米国・欧州・中国をはじめとする11,000銘柄以上を取り扱う外国株式など多彩な商品を競争力のある取引手数料で提供しています。より詳しい情報はホームページをご覧ください。
https://www.home.saxo/jp
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所在地 :〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-2-8 虎ノ門琴平タワー22F
加入団体:日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、日本投資者保護基金、日本商品先物取引協会
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