2023年第3四半期サマリー:AI(人工知能)-好材料、悪材料、あるいはバブルか

ジョン・ハーディ
チーフ・マクロ・ストラテジスト

サマリー:  今回の四半期予想では、AIに焦点を当てています。この技術は画期的な可能性を秘めていますが、同時に株式市場にとってのリスクでもあるようです。

今回の四半期予想では、AI(人工知能)が現在の市場と世界に与える影響に焦点を当てています。そして、スティーン・ヤコブセンが執筆した序論では、現在の市場サイクルが以前のサイクルと同じように推移するとの市場参加者の考えは誤りであるということも論じられています。ほとんどの市場のイールド・カーブが来年初頭からの大幅な金融緩和とソフトランディングの見通しを織り込んでいることを踏まえると、インフレ率が予想よりも長く高止まりする状況は最終的に市場に大きな驚きを与える可能性があります。投資家がディスインフレとソフトランディングを想定するシナリオに安住しているために、利回りは長期にわたり低位にとどまり、株式市場、特にAI関連銘柄の危険なほどの膨張を許しています。

第2四半期に脚光を浴びたAIというテーマ:

株式ストラテジストのピーター・ガンリューは、OpenAIが発表したGPT-4のような高度なAIシステムの出現は、今年に入ってこれまでで最も驚くべき出来事であり、すべてを覆す現象だと論じています。さらに彼は、この新技術の利点とリスクが激しく議論されているにもかかわらず、AIを喧伝する相場が米国株式市場を新たな極限まで押し上げていると述べ、米国と中国がAI軍拡競争を繰り広げるリスクがあると予測しています。

香港や台湾を含むグレーター・チャイナ(中華圏)のストラテジストであるレドモンド・ウォンは、中国が世界秩序の分断化が進む中で、生成AIの分野で直面する課題について指摘しています。米国における生成AIの飛躍的進歩は、コンピューターの演算処理能力の限界と地政学的緊張とも相まって、技術応用、生産性向上、成長という中国の好循環を崩壊させる恐れがあります。

マクロ・ストラテジストのチャル・チャナナは、半導体の製造とロボット工学の応用における日本の専門技術に注目し、これらがAI分野で強固な地位を築く基盤になる可能性を示唆しています。また、日本株とAIは今年の最も強力な2つの市場テーマを結びつけると指摘しています。

暗号通貨アナリストのマッズ・エバーハルトは、AIフィーバーによって、ブロックチェーン技術と暗号通貨市場全体への関心が薄れ、この分野をさらに投機的な無人地帯に追いやったと指摘します。暗号資産とAI関連資産のパフォーマンスは対照的ですが、特にバブルのような状況にあるリスクなど、顕著な類似点があります。

インベストメント・コーチのハンス・オウツホールンは、ETFを通じたAIテーマへの投資方法について概説しています。ETFであれば分散が可能であるものの、それでもなお、所々でバリュエーションが非常に高い水準に達しているリスクを指摘しています。

また、今回の四半期予想では、AIに焦点を当てるだけでなく、主要資産クラス全体の見通しについても掘り下げています:

通貨では、FXストラテジストのジョン・ハーディが、米ドル・ショートが厳しい現実を突きつけられる可能性を指摘しています。米国経済が底堅さを維持し、コア・インフレ率が高止まりするのであれば、ドル・スマイル理論でドル高を後押しする二つの対極のシナリオ、すなわち、米連邦準備理事会(FRB)のタカ派スタンス維持と市場の混乱の両方の可能性が生じるからです。 また、日本円については、ボラティリティが高まるリスクを予想しています。主要国の長期ソブリン債利回りが世界経済の底堅さを織り込む必要性に迫れれば、最安値水準にある円の一段安の可能性があります。一方、日銀は最終的にはイールド・カーブ・コントロール(長短金利操作)政策を大幅に修正せざるを得ず、その場合は大きく円高に振れる可能性があるからです。 

コモディティでは、コモディティ・ストラテジストのオール・ハンセンが、コモディティ・セクターは、数カ月にわたる低迷が6月に部分的に反転した後、第3四半期は堅調な足取りでスタートすることになりそうだと予想しています。最近の大幅な上昇は米ドル安に牽引された面があるものの、各セクター特有の動きも要因であるとしています。いくつかの主要産地は、数年ぶりのエルニーニョ現象に端を発した高温・乾燥気象に見舞われており、秋にかけて食品価格が上昇するリスクが最も懸念されます。

債券ストラテジストのアルテア・スピノッツィは、中央銀行は厄介なジレンマに直面していると主張します。もし本当にインフレに先手を打ちたいのであれば、10年にわたる量的緩和(QE)によって形成された資産バブルを弾けさせ、景気後退を引き起こす必要があります。しかし、中央銀行に、そのような踏み込んだ引き締め策を採ってまで、インフレとの戦いに勝ちたいとの意思があるのかについては疑問の余地があるようです。

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